大分団地新聞にコラムを連載しています。
今回は「偽装離婚」のお話です。「偽装結婚」は聞いたことがあっても、「偽装離婚」
は聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。
偽装離婚とは、法的には定義されていませんが、一般的には、真実は夫婦としての実態
があるにもかかわらず、例えば児童扶養手当やひとり親家庭の助成制度等の公的支援、生
活保護の受給等を目論んで、あえて婚姻関係を終わらせることを言います。
また、不貞の慰謝料を不貞相手に請求する際に、当該不貞によって離婚した方が、離婚
しない場合よりも慰謝料が高額になる傾向にあるため、そのことを目論んで、真実は夫(
妻)を許したにもかかわらず離婚する方もいます。
しかし、このような偽装離婚はさまざまなリスクをはらんでいます。
まず偽装離婚をすると、公正証書原本不実記載等罪(刑法157条1項)に問われる可能
性があります。また虚偽申告で公金を受け取るわけですから、児童扶養手当の不正受給の
罪(児童扶養手当法35条)や詐欺罪(刑法246条)にも該当し得ます。さらに離婚を前提
に支払った不貞慰謝料の返金のほかに、損害賠償を請求されることもあります。
バレないと思っている方もいるとは思いますが、弊所ではときどき、「自分だって生活
が苦しいのに頑張っている。だから許せない。通報したい」というご近所の方からの相談
を受けることもあります。想像以上に世間の目は厳しいと思っていた方がいいでしょう。
刑事罰を科されることもさることながら、一度失った社会的信用を取り戻すことは非常
に厳しいものです。安易なことはおやめください。
OITA CITY PRESS 2025年12月号掲載